お客様に「元気」をお持ち帰り頂くということ
コロナ前のような日常が戻ってきた店頭の風景。
最近、お店から届く「ありがとう」を読んでいると、本当にお客様 お一人おひとりの背景には様々なドラマがあるなぁと思います。
そして、心を開いたスタッフにご自身の悩みや苦しさなどをお話しされて、
最後は元気になってお帰りになるお客様のエピソードを読むにつけ、
私たち販売員の存在意義に改めて気づかされることが多いものです。
今回はそんなお客様の「ありがとう」をご紹介したいと思います。
大切な人を亡くされたお客様に掛けたひと言
以前勤めていたブランドの時からのお客様とのエピソードです。
いつも気にかけてくださり、「元気?」とご来店くださいます。 質の良いデザイン性のある物をお好みなのですが、その日も気に入ったものが見つかり、 お包みしながらお話していました。
すると突然「あのね、お父さんが(ご主人のこと)亡くなったの」と、 目を真っ赤にしながら話してくださいました。 病気療養中であることは伺っていたのですが、そこまでお悪いとは想像しておりませんでした。
私も今年父を亡くしており、気落ちした母を見ておりましたので、 「今日も暑いねとか、たわいない話ができる人がいなくなるのは本当に堪(こた)えますよね。 悲しいと思いますが、これからの○○さんの人生も大事だと思います」と申し上げたところ、 「でも、私が楽しんだらお父さんに悪いような気がするのよね」 とのこと。
何秒間か考えましたが、「お気持ちはとてもよくわかります。 でも、○○さんがこれからを楽しく生きることをダメとおっしゃる お父さんではなかったですよね?」とお答えしました。 すると、 「そうだ、そうよね!なんか元気出た!ありがとう。来てよかった、また来るね!」 と仰って目を真っ赤にして笑いながらお帰りになりました。
お客様とスタッフは、言ってしまえばお店で会ってお買い物のお手伝いをするだけの関係性であり、 私の対応をお気に召してくださる方ばかりではないと思います。 それでもこれからも人として寄り添える人でありたいと思えた出来事です。
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必ず訪れる身近な人、大切な人とのお別れ。
「私が楽しんだらお父さんに悪いような気がする」と仰ったお客様の気持ちがとても良くわかり、 思わず目頭が熱くなりました。
こんな辛いことがあったのに、自分が笑ってもいいのか?楽しい思いをしていいのか? 誰しもが経験する心の葛藤に対し、本当に大切なことを気づかせてくれたスタッフのお声がけだと思いました。
病気と闘う奥様の笑顔が見れた瞬間
先日、閉店間際にご夫婦が店内入り口のボディを気に入りご来店されました。
特にボディが着ているトップスを気に入って頂いて、お話しをお伺いすると、 ご夫婦の趣味のゴルフウェアを買いにきた帰りに寄っていただいたようです。 当日のお洋服もカジュアルで、普段からゴルフウェアがメインでパンツばかりとのことでした。
気に入って頂いていたニットは、少し厚手の可愛いらしいニットでしたので、 お気に入りのパンツスタイルはもちろんのこと、スカートへのチャレンジはいかがですか?と ご提案させて頂きました。 奥様はスカートはもう何十年もはいていないとのことでしたが、特にご主人に気に入って頂けたので、 ご主人と私とでなかば強制的に(笑)奥様に試着をして頂きました! 試着したスカートは縦ラインで広がりすぎず、お客様のお好みの丈感で、 奥様の納得の笑顔をそこで初めて見ることができました!
奥様がお着替え中に、ご主人が『実は妻は鬱なんだよ、こうやって気分転換に外に出ているんだ』と、 お話しして下さいました。 病気の知識がなかったため、 『次のお出掛け時の気分転換になれば嬉しいです』 と、一言を返すだけで精一杯の私に 『妻が新しい物にチャレンジするのを久々に見たよ。 あんなにはいてなかったスカートも気に入ってるようで嬉しい。ありがとうね』と仰ってくださいました。
私はただただ接客させて頂いただけですが、お客様の背景にある何かに寄り添えたことを嬉しく思います。
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この2つのエピソードのように、
お客様の背景にある嬉しいや悲しい様々なドラマに出会ったとき、 お客様の気持ちに寄り添い、共感しながら発するスタッフの言葉がお客様の笑顔に繋がるのであれば、 こんなに幸せなことはありません。
店頭スタッフの存在意義を改めて確認できた事例だと思います。