新入社員と育成シスターから見た
「Z世代育成」のキーワード
新入社員が入社してちょうど5か月がたちました。
調査によると、2022年の新入社員の65%が入社3か月目の6月に 「今の職場に働きがいを感じている」そうです。
働きがいを感じる職場の1位は「自身の成長を感じる」、2位「誰かの役に立てたと感じる」、 3位「褒められる」。
働きがいの有無で一番大きなGAPが出ているのは、「1日1回ありがとうと言われる(20.9%)」となっており、 安定志向と承認欲求が強い一方で、仲間や他人の役に立ちたい貢献意欲も高い Z世代らしい特徴が出ています。
株式会マイナビ 2022年6月調査より(N=800名)
弊社で実施した新入社員の3か月フォローアップ研修では、自身の成長を客観視しつつも、 同期の成長を目にすることが大きな刺激になったようです。悩み事をヒアリングしましたが、 大きな問題を抱える新人がいなかったことに安心しました。しかし、グループワークや対面で雑談をする中で、 「職場への満足度」の温度差を感じた新人もおり、その背景を考えてみました。
<満足している新人>
現状に満足している新入社員の共通点は「自分の理解者」がいることです。 例えば、研修の休憩時間の雑談の中でこんな悩みを話してくれたAさん。
Aさん:配属3か月なのに個人売りの目標金額が他の先輩と同じなんです! そんな高い目標、絶対達成できないです~。 私:じゃあ〇〇さんは新人だから目標金額は先輩の半分でいいよと言われたらどう感じる? Aさん:それは嫌です!やる気なくなります! 私:だったらいいじゃない、先輩と同じ目標で・・・。 Aさん:そうなんですよ、店長、私のこと良くわかってるんですよね~。
実はこのAさんの店長からは、配属された1か月後に「Aさんは想定より出来るので、 予定していた育成スケジュールが早く終わってしまう。 期待できる新人なので前倒しで育成して良いか?」と相談があり、 「少し高めの目標を持たせた方がやる気が出るタイプのようだから、 どんどんやらせてみよう」と話をしていました。 当然Aさんはそのことは知りません。Aさんの性格を考え、 先輩と同等に扱うことが一番だと考えた店長は、シスターと相談しながら 個人売り金額の目標を設定したのではないでしょうか。 同期の前で“先輩と同じ目標”を「悩み」として話していましたが、 「店長から期待されている自分」に対する満足感をほんのちょっぴり感じましたし、 意欲高くチャレンジしてくれそうだなと期待をしています。
<ちょっと気になった新人>
配属から1か月は毎日、2か月目は週に一度の頻度で新人とシスターでやり取りをしてきた フィードバック面談が終了し、1か月が経過。 今でもフィードバックシートにある先輩からのコメントを時々読んでいる新人Bさん。 自らを振り返る行動は成長に欠かせないので、良い行動ですし、意欲が高いと思いましたが、 「フィードバックが少なくなってきたことを寂しく思っている」のかもしれないとも思いました。 「自分に何が足りないのか知りたい」「自分の成長を確かめたい」 「先輩はどう思っているのか」などと考えて、 過去の先輩コメントを今でも見返しているのではないでしょうか。 配属直後は力を入れる育成も、徐々にフェードアウトしていきますが、 Z世代は今までより長く「成長」を見守ってくれていると感じるアクションがあると 安心するのかもしれません。
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新人育成は「指導」でなく「理解する」ことから始まる
では、育成担当の「シスター」側はどう思っているのでしょうか。
実は弊社の今年のシスターは全員が25歳以下(入社2~3年め)で新人と同じZ世代。 半数が初のシスター役でしたが、新入社員の価値観や気持ちを等身大で理解している為、 「年が近いのでお互い仲良くなるのが早かった」とジェネレーションGAPに悩むことなく育成できたようです。
伸び伸びと成長している新入社員の様子を見ていると、シスター側の配慮が大きかったのだと思いますが、 シスターの振り返り会でのコメントに、Z世代と接する際のキーワードがあると感じたので、 その一部を紹介します。
<Z世代育成のキーワード>
~自身もZ世代のシスターの感想より~
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5分おきのレベルで気にかけていた(すごく細やか!)
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指導ではなく「理解してあげる」姿勢で(上からでなくヨコ目線)
- 新人のタイプにより、かける言葉は違う
- (多様性は当たり前、自分らしさを尊重)
- 仕事の事だけでなくプライベートの話もしてコミュニケーションをたくさん取る
(どちらも人生を充実させる大切な要素)
- 新人が「わかります」と言っても何度も確認する
(わからなくても聞きに来ない)
自身が同じZ世代だからこそ、無意識下でとった行動なのかもしれませんが、 今後の育成の参考になると思っています。
若いシスター達は、新人育成を通して自分自身も成長したと感じているようで、 「今まで自分中心だったが他のスタッフの気持ちを考える視点が出来た」 「新人を思う気持ちから思い切ってとった行動が自身の成長に結果的につながった」と 話をしてくれたスタッフがいました。
~世代感の違う店長に「今すぐ新人を褒めてください!」~
<背景> 新人にも行動レベルに厳しい店長。成長させる為、新人に愛のムチで厳しく接しており、 新人はずっと怒られていると感じている。 店長に嫌われていると思う新人は、シスターのCさんに相談する日々・・・。 しかし、実は店長はシスターの前では新人の良い部分を褒めていた。
シスターのCさんは、新人の気持ちも、成長を期待する店長の気持ちもわかり、 間に入るポジションとしてかなり悩んでいました。 ある日、新人の良い所をシスターに伝えた店長に思わず強く言ってしまったそうです。 「今すぐそれをインカムで新人に直接言って褒めてください!」 インカムで他のメンバーにも聞こえるように店長が褒めたところ、 今まで褒めてもらったことがない新人は「めちゃめちゃ嬉しそう」で、 一気にモチベーションもUP。 ずっと褒めて欲しかった新人の気持ちを店長に伝えたことで状況が一変した。 「上司にも言うべきことは伝えるべきだと、気持ちが吹っ切れて、 シスターとして一皮むけた瞬間だった」と、Cさんは振り返って話してくれました。
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Z世代は仕事や職場に
「つながり」と「オープンな関係」を求めている
- 自分のタイプにあわせて、育成してもらえている環境に満足する新人
- 先輩からのフィードバックコメントを今も読み返す新人
- 5分おきくらいのレベルで新人を気に掛けるシスター
など、新人育成の現場でのエピソードをご紹介しましたがいかがでしたでしょうか?
「多様性の中で自分らしさを大切」にし、「理不尽な命令や自分に合わない 価値観を押し付けられることに納得しない」Z世代ですが、 マイペースかつ個人主義中心ではあるものの、他者とのつながりも大事にします。
コロナ禍で食事に誘うことが難しい今、雑談でいいので話しかけてもらえるという 「つながり」、自分の業務について職場の上司や先輩からアドバイスやコメントが定期的にくる 「つながり」を彼らは求めており、それが働きがいに繋がっているようです。
疑問や問題点をすぐにネットで検索して解決できる環境で育ってきたZ世代。 これからも新入社員を採用していく企業には、今まで以上に気軽に確認したり相談して 解決できるようなオープンな関係と環境を用意することが求められてくるのではないでしょうか。