リアル店舗とECサイトの共生戦略
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メールマガジン編集事務局です。ワンスアラウンドが毎週お届けしている『現場マガジン』は、 文字通り我々が運営する《現場》発のホットな情報をお届けするメールマガジンです。
今週は、『マーケットレポート』の第3弾をお届けします。
第2弾に続いて、コロナ禍でのマーケットの変化と、商業施設を中心とする現場の変化をタイムリーに捉えながら、 自らも現場を持つ弊社ならではの視点で、これからの時代へのヒントをお届けしたいと思います。
【Market Report vol.3】
商業施設とECサイトとの共存・共生はどうあるべきか
皆様、こんにちは。ワンスアラウンド顧問の馬場です。
第2回目のマーケットレポートでは、これからの商業施設では、お客様の「新しい生活様式」をバックアップするために、 「人軸を考えた営業スタイルを考えましょう!」 ということで、 「営業時間」「店休日」「元旦営業」についての見直しをご提案しましたが、 今回は、コロナ禍でお客様がお店に足を運ばずに用が足せると知ってしまった 「ネット購入」につきまして、お客様側視点と企業側視点から考えてみたいと思います。
●EC(BtoC)の市場規模はどうなっているのか?
コロナ禍を受けて
お客様側は 「店舗に行かなくても、十分に用が足せること」
企業側は 「自粛時に店頭売上がゼロの時も、ECで売上が取れること」
を知りました。
■経産省「電子商取引に関する市場調査」のデータを見ると
コロナ前の2019年までの10年間、「右肩上がり」が続いています。
2010年:7兆8880億円 → 2019年:19兆3609億円 (約2.5倍)
2018年→2019年対比 1兆3764億円増 (7.7%増)
2019年:物販系分野のEC売上 10兆515億円 (EC化率6.76%)
■大手ファッション上場小売企業(10社)の3~5月期のEC売上高を見ると
実店舗が営業休止を余儀なくされましたので、各社とも
デジタル接点に集中した結果、自社ECと他社ECとの合計では、
- EC売上高の平均伸び率 30%以上
- 自社ECの平均伸び率 50%以上
- 他社ECの売上の伸び率 まだら模様(自社ECへの切替え企業あり)
となっており、この間は一時的ですが、EC売上比率が40~60%まで上昇しました。
●お客様のECサイト利用の現状はどうなっているのか?
■ECサイトを大きく分類すると
・専門店企業の自社サイト |
に分けられますが、
●専門店企業の自社サイトに取り組んでいる企業(特にアパレル)の売上、EC比率は共に年々高まっています。
この背景には、以下のサービスやコンテンツの拡大のもとに 「オンライン接客」や「スタッフ投稿」が積極的に行われていることがあります。
顧客視点でのサービスの提案 → 試着申込等
リアル店舗と自社ECの相互利用 → 店舗在庫と倉庫在庫の共有
コンテンツの拡大とレベルアップ
→ スタッフ投稿のコンテンツは、「スタイリング」「フォトログ」「ブログ」そして「動画」投稿へと拡大しています
●商業施設の運営サイトは、新たな販売機会を創出する「リアル店舗共生型」ECモールとして運用されています。
そこで三井不動産の「& mall」について、運用実態を調べてみました。
- ららぽーと、アウトレットパークのカード会員が顧客基盤
- 店舗とECの相互送客で、店舗での在庫欠品時の対応や、「& mall」で見た商品の店頭在庫があるかの確認を可能にしています
- ららぽーと内に「リアルな&モールデスク」を設置して、問合せや受取、試着、返品などへの対応をしています
- 最終的には、リアル店舗とECモールとの相乗効果で売上の拡大が出来る「オムニチャネル」のプラットホームを目指しています。
●コロナ禍でECサイト利用はどのように変化したか?
■コロナ禍での「アパレル市場での消費者のEC利用動向」について
MS&コンサルティング社が、5月に1049人対象に調査しています。
調査概要 |
●商業施設にとってのECの課題は?
■「売上計上」については
自社サイトに取り組んでいる企業で、リアル店舗からECサイトに誘導した売上は、SCでの「店舗売上」に計上されません。
コロナ禍後は更に定着すると思いますが、この問題はオムニチャネルを前提としての店舗運営では大きな命題です。
■ファッション関連業界のSCにおいての課題は
テナント側からは、特に「売上至上主義による在庫増」「粗利益の悪化(原価の上昇とプロパー消化率の悪化)」 「値引き販売の常態化」「長時間営業による人材難」が挙がっていました。
SCには「セールでの価格訴求」ではなく、「消費する価値」「サービスの価値」「買う理由付け」 そして何よりもネット(EC)と融合しながら、 「SCに行く(リアル店舗に来てもらう)理由と価値」を創って欲しいと思います。
●商業施設とECサイトとの共存・共生にむけて
「EC」と「リアル店舗」は、従来は「二律背反」の考え方になっていましたが、 現在は、「EC」も「リアル店舗の集合体であるSC」も、インターネットの中で動いています。 今は、「EC」と「リアル店舗」は対立軸ではありません。
コロナ禍により、ECの売上が伸びる中、リアル店舗は売上ダウンに拍車が掛かり、生き残りの為の施策を求められています。
弊社も26店舗の販売代行を運営しており、見えないお客様に対してSNSを通しての接客を強化していますが、 現場では次のような効果が生まれて来ています。
■セレクトショップでは、フォトログ、スタイリング、ブログ、動画を通して、
1.スタイリングの勉強になる
2.写真・動画撮影の技術がアップした
3.コメントを書くことによってボキャブラリーが増える
など、スタッフのモチベーションが上がっています。
■レディスショップでは、店舗在庫が無い場合はECサイトに送客して、そこからお客様へのお届けにより売上が取れています。
店頭があってこそですが、ECの取組みによって、 スタッフのモチベーションが上がり、現場が活性化しています。
SCや専門店企業それぞれにとって、オムニチャネル戦略に向けての環境整備が問われている段階だと思いますが、 木を見て森を見ずの発想ではなく、どんな新たな森(商業施設)にするのかを決め、 お客様が来店したくなり、テナントスタッフが働きやすい環境を一つひとつ整備することが、 新たな商業施設をつくる近道になるのではないでしょうか!
商業施設におけるリアル店舗だけでは淘汰されることから、 現場は既にオムニチャネル型営業スタイルに向かっています。
従来の商業施設を支えていた基準、特に「CSやES面」で施設の強さをつくって来たインフラ (例えば、店長会、種々の教育や研修、環境設備やスタッフ向けイベントなどの福利厚生分野、 信賞必罰、等々)をオムニチャネル型のインフラに整備し直すことが急務ではないかと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コロナ禍により時間軸が早送りされ、諸々の課題が目の前に突きつけられました。 未来を考えるにあたっては、その瞬間だけではなく、フロー(流れ)から読み取るのも大事です。 次回は、日本が抱えている人口動態を直視して、SCの今後を考えてみたいと思います。
ワンスアラウンド株式会社
顧問
馬場 英喜