「接客マインドを磨くための2つのアプローチ:褒め合い風土と360度評価」
接客マインドをどう育てるか
前回のメルマガで、店会議のお話をさせて頂きました。 その中で、当店の下期の目標が「相手本位のマインドを醸成する」で、それを追い続けている、 ということをお伝え致しました。
早いものでもうすぐ下期も終わりますが、今回はその具体的な取り組みと得られた成果についてお話しようと思います。
そもそも何故この目標を立てたか。それは当店がビジョンとして掲げている「血の通ったお店」で あり続ける為でした。スタッフの入れ替えがあり、長く一緒に働いてきたスタッフが去りました。 新人スタッフが多く入店し、新しいチーム体制になりました。私と親子ほど年齢の離れた彼らに、 どのようにビジョンの中身を伝え、体現していってもらうかを考えた結果、導き出したのが下期の目標だったのです。
目標達成のため、私は店会議のディスカッションで生まれたアイデアを整え、すぐに実行に移していきました。
接客について考える機会を増やす
前回の当店の風土(=当たり前になっていること)に、ファッションを楽しむこと、SNS投稿を楽しむことがあります。
それは日常会話のようにスタッフの口の端に上ります。
同じように、接客やお客様の話が、若いスタッフ同士の会話の中に自然に出てくるのが理想でした。
その為にはまず、考える機会を作ることが必要でした。
① 褒め合う風土をつくる ひとつ目のアプローチは、「お客様から直接のお声が頂けるシステムを活用する」ことでした。 このシステムは、店舗を推奨してくださる内容ですとメールが届くので、 誰でも確認出来る仕組みになっています。 例えば、若手女性スタッフのHが、三十代の男性のお客様から頂いたこんなお言葉 これに対し、スタッフのこんなコメントが集まりました。
この取り組みを始めて間もないころに頂いたコメントでしたが、この感想をHに聞いてみると、 「めっちゃうれしいです!何回も見ちゃいます」と嬉しそうに笑っていました。 例えば私が四十代の女性のお客様から頂いたこんなお言葉 これに対して、スタッフからこんなコメントが集まりました。
実際に私も体感して、Hの気持ちがよく分かりました。他のスタッフが褒めてくれたり、 感想をくれたりすると、本当に嬉しいんですよね。 この「褒められて嬉しい」という気持ちが、若いスタッフの承認欲求を満たし、 もっとお客様が喜んでくれることをしたい、という能動的な行動へと繋がっていきました。 ② 360度評価 ふたつ目のアプローチは、前述のシステムとは別の、お客様から頂いた「ありがとう」をレポートにして共有出来るシステムを活用することでした。こちらは、以前は私がスタッフの話を聞いて共有していましたが、下期から毎週金曜日を提出日とし、指定されたスタッフ自身がレポートを書いて共有する運用に変更しました。 その中で先ず、三月に卒業を控えた男子学生スタッフSが共有してくれたレポートをご紹介します。 『私が入りたての頃、接客を楽しめるようになるきっかけになったお客様との話をしたいと思います。 我々の仕事である接客を疎ましく思う方も少なくないと、SNSなどを見ていて当時の私は感じていました。 だからこそ出すぎてはいけない。頼まれたことをやり、聞かれたら答える。 それが私のやっていたことでした。ですが、その日私は、お買い物を楽しみに来ていて、 スタッフとの会話が大切と考えている方がいるということを、初めて知りました。 これに対し、若いスタッフからこんなコメントが集まりました。
私から、「大人の階段昇ったな、S(笑)。素敵なエピソードをありがとう。 お前はいつもお客様本位で売場に立っている。いっぱしの服屋になったなあ、と 目を細めてしまうことが最近よくあります。素晴らしいね」とフィードバックしたところ、 「働くことを楽しまなければと思えたのは、店長が作ったこのお店のおかげです」 とSは返信をくれました。 私や上位者だけでなく、全員が感じたことをラフにコメントしあう360度評価にしたことが、 このアプローチのポイントだったように思います。Sのコメントに私が感じること、 若いスタッフが感じることは異なります。それが共有されることで、私が気付けなかったことも見えてきますし、 私が大切にしたいこともより知ってもらうことが出来ます。 |
ブラさず、焦らず、覚悟をもって
半期の目標は達成出来そうなところに来ていますが、順風満帆ではありませんでした。 大きな失敗や難しいことも多い半年でした。
しかし、目標をブラさず、上手くいかなくても焦らず、スタッフと向き合ってきました。 心を育てるには、おそらくそれ以外に方法はないでしょう。
向き合って心を育てる―というとなんだか堅苦しく聞こえますが、 そのアプローチの仕方は柔軟であるべきです。ユニークであるべきです。
スタッフの課題、店舗の課題を見つけたら、まず身の回りにある武器の中から、 「有効に活用出来るものは何か?」を見定めるとよいと思います。 幸い、以前に比べて店舗には様々なツール、システムが備わっています。 言い換えれば、持っている資産に目を向けるのです。
この半期、前述のように私は二つのシステムを利用しました。
活用する際、私からのトップダウンではなく、スタッフからのボトムアップを継続的に行えるやり方を選択しました。 そして、常にポジティブな目線で、笑いながら、時間をかけてマインドを育んできたつもりです。
覚悟を持ってやってきて良かった―半期の終わりに、スタッフが自らの接客について笑顔で話し合う姿を見て、そんなことを思います。