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スタッフを成長させるために必要なメッセージ


アイメッセージが人の心を動かす

「アイメッセージとユーメッセージ」

自らの想いを相手に伝える。メッセージを発する。それは店長の最も重要な仕事のひとつと言えるでしょう。

メッセージには「アイメッセージ」「ユーメッセージ」があると言われています。 「アイメッセージ」とは「私」を主語にして主張する方法です。
臨床心理士のトーマス・ゴードンによって提唱されました。
<具体例>
・(私は)連絡がもらえて嬉しい。
・(私は)そうされると悲しい。
・(私は)あなたといられて楽しい。
主語を「私」にすると、相手に配慮しながら自分の主張が出来る為、柔らかい印象になると言われています。 自分の想いを伝えますが、判断は相手に任せることになります。

「ユーメッセージ」とは「あなた」を主語にして主張する方法です。
<具体例>
・(あなたは)もっと出来るでしょう。
・(あなたは)約束を守りなさい。
・(あなたは)遅刻してはいけません。
このように相手の領域に分け入っていくような言葉になります。 「あなた」が主語になると、相手の行動を制限することになるので、強い口調になります。

リーダーとしてスタッフに接していると、「ユーメッセージ」を使う機会が必然的に多くなります。 新しいシステムが導入され、それを落とし込む時。ルールや規約をアナウンスする時。 目標を定めて取り組みを始動させる時。「~してください」あるいは 「~してほしい」というトップダウンの伝え方が必要なシーンは、 組織を束ねている以上、毎日のようにあるでしょう。

私も「ユーメッセージ」はよく発します。しかしそれだけでは組織は動きません。 スタッフは成長してくれません。何故ならスタッフには「アイ」=「私」があるからです。 「私」に働きかける最良の手段は、「私」を主語とする「アイメッセージ」であると私は思います。


「迎え入れる言葉」

一度当店からブランド異動したRという女性スタッフが、再び当店への配属が決まったので、 事前に話す時間を設けました。
彼女は以前に在籍していた時に、当店で展開するレディースのレーベルのひとつをメイン担当としていました。 そしてそのレーベルへの強い思いを彼女が持っていることを私は知っていました。

私は彼女と面談して開口一番、こう言いました。 「Rが戻ってきてくれたことを私は本当に嬉しく思っている。また一緒に働いてくれてありがとう」と。 少し緊張した面持ちのRの顔が綻びました。私は続けました。 「あのレーベルに対するRの熱量は誰よりも私が知っている。 あのフロアに今一番必要なのはRだと思う」。
そして、最後に聞きました。「任せてもよいかい?」。

それから約半年が経ちます。入社三年目でまだまだ成長途上である為、 トライ&エラーを繰り返しながらではありますが、セクション長としてフロアに責任を持ち、 非常に活き活きとお客様への対応、スタッフへの発信や啓蒙を行ってくれています。

「贈る言葉」

豊富な販売経験があり、役職者候補生として入社し、当店に配属になったSという男性スタッフがいます。 ほとんどの既存スタッフよりも年齢が上だったので、最初は戸惑っていましたが、 持ち前のコミュニケーション能力の高さですぐに当店に馴染んでくれました。
真面目で一生懸命でしたのでよく褒めましたが、役職者候補生ということもあり、それ以上によく叱ったスタッフでした。

そんな彼がやはり異動となり、短い期間で当店を離れることになりました。 彼は「もちろん前向きに受け止めています。ですがもう少しだけでいいから、ここで学びたかったです」と、 異動を残念に思う気持ちもあったようです。

私は異動や退職をするスタッフには、必ず個人に宛てたメールや手紙を贈るようにしていますが、 Sには次のような言葉を贈りました。

「Sへ。君がうちのお店からいなくなるのが寂しい。 せっかく仕事も覚え、キャラ立ちもして、楽しく慣れてきたのになあ。 頼もしくなり、すごく信頼していたから、早すぎるお別れがとても残念だ
大型ルーキーが入ってくるって、みんなSが入店してくれるのを楽しみにしていた。 でも同時に経験豊富な年上ということで、若いスタッフは少しドキドキもしていたんだ。
だけどSが謙虚に楽しく売場とスタッフに向き合ってくれたおかげで、 今やすっかり昔からいてくれたような存在になった。たくさん気も遣ったと思うけど、本当にありがとう。
ネームバッヂの研修表記が取れてから、少し厳しくしたと思う。 ここで一人前としてやるってことは、ブランドの看板を背負うことになる。責任が伴うんだ。 だから厳しい言い方をしたこともあったけど、そのたびSは真摯に受け止めて前向きに頑張ってくれた。 短期間で一人前になってくれてありがとう。 目覚ましい成長の過程を見ていたから、何度も言うけれど、私は本当に寂しいよ
だけどね。ここで培ったことを活かして、新しい場所で君が更に輝く姿を想像すると、 それはそれで嬉しくなる。寂しくなったらいつでもおいで。 うちのお店は変わらずSの傍にいるぞ!

彼はそれからしばらくして、ある店舗の店長に抜擢されました。
そして、私に「僕は入社して最初にお会いした店長が武島さんで良かったです」から始まる、 アイメッセージをメールで送ってくれたのです。Sは今、新しい環境で、新しいリーダーとして、奮闘しています。


「想いを込めた言葉だけが伝わる」

ご紹介するのが少し照れ臭いメッセージでした。
「アイメッセージ」を通り越して、「愛メッセージ」になってしまっているな、と我ながら苦笑する時もあります。 でもそれくらいでいいのです。

私はスタッフへの自らの想いや感情を真剣に伝えることを、これからも厭いません。 想いを込めた言葉には、人の心に響く力が宿ります。私はそう信じてスタッフの育成にあたっています。

店長が心を開いて向き合えば、スタッフは必ず成長で返してくれる。 その信念をリーダーが持ち続けることが、必ずチームを強くすることに繋がります。

武島 幸宏
武島 幸宏
ワンスアラウンド株式会社 ビームス みなとみらい 店長

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