アフターコロナでSCが描く未来のビジョン
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ワンスアラウンドが毎週お届けしている『現場マガジン』は、文字通り我々が運営する《現場》発のホットな情報をお届けするメールマガジンです。
今週は、『マーケットレポート』の第5弾をお届けします。
コロナ禍でのマーケットの変化と、商業施設を中心とする現場の変化をタイムリーに捉えながら、 自らも現場を持つ弊社ならではの視点で、これからの時代へのヒントをお届けしたいと思います。
【Market Report vol.4】
アフターコロナにSCに求められるものは?
皆様、こんにちは。ワンスアラウンド顧問の馬場です。
前回は、リアル店舗とEC化は、対立軸ではなく共存共生に向けてオム二チャネル化が進んでいくなか、 それに向けた環境整備をしましょう!とのお話をしました。 今回は、流通業界も人口減少による「国内消費減」や少子高齢化による「労働力不足」があり、 決して明るい状況ではありませんでしたが、コロナ禍によって顕在化してきた社内外の環境変化をキャッチアップして、 今後求められるポイントを考えてみたいと思います。
●人口総数及び年齢区分の推移は?
人口動態を見てみると、人口減少がより進み、構造的に見て日本は世界でも突出した「少子高齢化」社会を迎えます。
■総人口推移 (出典:総務省統計局)
2008年 1億2808万人 をピークに
2019年 1億2617万人 に減少し
今後は、2030年には1億1600万人に、2050年には1億人を割りこむことが見込まれています。
日本人の人口については、2019年1年間では約50万人減少しました。
これは鳥取県全県の人がいなくなった事に相当しています。
■年齢3区分 (15歳未満、15歳~64歳、65歳以上)別では、
*数字は2008年→2019年、 ( )は総人口に占める構成比
65歳以上の老年人口は
2821万人(22.1%)→3589万人(28.4%)と増加、
15歳から64歳までの生産年齢人口は、
8230万人(64.5%)→7507万人(59.5%)と大きく減少しています。
そして、コロナ禍により、都心→郊外・地方への移動も始まっています。
■東京都の住民基本台帳に基づく転入者と転出者数は、
・今の調査方式で比較可能な2013年7月以降コロナ禍の2020年5月に初めて転出超過となり、 5月-1069人、7月-2522人、8月-4514人となっています。
・戦後日本は東京に「人財とお金」を集めて経済成長を成し遂げ、全国から若者を呼び寄せることで地方の縮減が進み、 少子化を加速させましたが、コロナ禍でのテレワークの推進で、ビジネス面でも地方分散が現実味を帯びて来ました。
これを機に東京一極集中を見直す転機として捉えたいと思います。
<人口動態データ推移資料はこちらから>
出典:国立社会保障・人口問題研究所ホームページ
●少子高齢化による問題と解決のためには
■生産年齢人口(15~64歳)の減少により、ターゲット客が減少しています。
この問題については
・今後は、「いかにダウンサイジングをしていくか!」だと思います。
・新規開発においては、敷地及び容積率を鑑みた計画を、既存施設においては、 縮小した部分に何を導入するのか?が求められます。
■採用難及び人件費の高騰による労働力不足の問題については、
パーソナル総合研究所は、今年3月に日本の全産業の労働市場については、 2030年には、「約640万人が不足する」との調査結果を発表していますが、 10年後予測される不足を埋めるには次のことが考えられています。
(1)働く女性を増やす保育の受け皿の整備・充実が求められます。
(2)働くシニアを増やす 女性シニアも就労可能な社会作りが必要です。
(3)働く外国人を増やす 労働条件の改善が必要です。
(4)生産性を上げるデジタル化の環境作りと人材育成が必要です。
●コロナ禍で顕在化した社内・外の与件
SC事業においては、少子高齢化による問題だけではなく、コロナ禍の6ケ月間を経験し、 浮かび上がってきたことの中にヒントがあると思います。
具体的には、「変化をキャッチアップ」して、事業の業種・業態や商品構成の見直しまで、 いかに踏み込んで対応していくのかということです。
■お客様の消費行動
都心→郊外へ、そして過密を避ける行動へと変化しています。
・飲食業では、外食の居酒屋業態が特に厳しい状況になっていますが、 外食から「テイクアウト、宅配にシフト」して生き残りを掛けています。
・弊社も主力事業である教育研修をこれまでは集合形式で実施していましたが、 過密が大きな課題となり、自粛期間中を含め、いち早く研修やロールプレイング大会の 「オンライン化での取り組み」にチャレンジしています。
■働き方の変化
毎日の会社オフィスでの業務が在宅勤務出来ることが分かり、 ステイホーム関連での企業や商品が好調な動きとなっています。
ホームセンターや家電店では、リモート用やおうち時間向けの商品として、 「椅子」「マイク」「照明スタンド・器具」「収納関係商品」「DIY」などの商品が、 スーパーでは巣ごもり商品としての食品が、感染防止商品では、 「マスク」「消毒液」「フェイスシールド」「間仕切り」などの商品が好調です。
■オムニチャネルの加速
現場ではオムニチャネル型の営業スタイルが進んでおり、共存共生しながら、それに対応するインフラ整備が求められています。
・ECサイトルートとリアル店舗での売上計上をどうするか?
こちらは、今後SCとテナント両社で向き合わなければならないと思います。
・また、テナント企業側は、SCの新規開業や改装OPENする毎に出店要請を受けていますが、 ECが日常化されることにより、リアル店舗のドミナント出店の必要がなくなり、エリア内での出店を絞ることが予測されます。
●今後のSCに求められるものは?
したがって、商業施設の大きな課題は、
「SCの開発から50年、今後のSCをどう変えていけるか」という事です。
この50年間の小売業界を見ると、変化しきれなかった「百貨店」は厳しい状況を迎えており、 GMSも、発祥の「量販店」から「食品特化型SC」、「コンビニ」、「不動産事業」等に業態を変えたり、 新たな事業に挑戦して今日に至っています。
SC業界も、従来型の「モデル」や「価値観」に拘るのではなく、 前述のようなコロナ禍で一気に顕在化した社内外の変化を受け止め、前に進まなければなりません。
その実現のためには、SCのミッションを変えずに、私たちがこれから提供するソリューションを開発すること。 つまり私たちのこれからの使命を提供する形を変えることが大事になります。
業界は違いますが、外部環境変化に対応した企業としては、
・富士フイルムは、2000年までは、フイルムカメラ主流でしたが、現在は「化粧品、医薬品」分野に進出し、
・任天堂は、花札、トランプでしたが、デジタルゲーム機、ゲームソフト分野に進出しています。
SCの役割は、「楽しく過ごし」、「生活を豊かにする」場の提供です。
しかし、前述のように「ダウンサイジング」「オムニチャネル化」そして「お客様のライフスタイルの変化」に対応した 「商品構成(テナント構成)」と「収益構造」について考えなければなりません。
特に、収益構造という視点では、今後は空室という大きな問題が予測され、 テナント賃料のみに頼った事業モデルだけでは、限界に来ています。
そこで、新たなテナントミックスや、住(マンション)、オフィス、医療関係等、 資産を有効活用したWithコロナ時代の新しい生活様式に合った需給のバランス取りが重要になります。
また、賃料の設定についても、今後さらに拡大するオムニチャネル化を見据えた場合には、 「売上連動型」から「固定賃料型」への変化が求められるのではないでしょうか?
われわれは今もなお続いているコロナ禍を経験し、未来(将来)に何が起こるか分からない事を知りました。
10年後、20年後はどうなるのか?人口動態の未来の姿は予測できますが、 それに向けて自ら変わらなければ淘汰される時代に入りました。
今起きているさまざまな事象を、「千載一遇のチャンスとしてキャッチアップ」し、 変化を的確に捉えた事業戦略をいち早く立案して、アフターコロナでの成長に向けて進み出すことが求められています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
オリンピックの開催を控え、ワクワク、ドキドキして迎えた2020年ですが、 コロナ禍に見舞われ、あっという間に残り1ケ月程になりました。
次回は、コロナ禍の2020年を振り返り、2021年に備えたいと思います。
ワンスアラウンド株式会社
顧問
馬場 英喜