年末年始商戦から見えた、今SCに課せられている課題とは?
【Market Report vol.19】
ショッピングセンター(SC)の未来を考える ―第10回―
コロナ禍で2回目の年末年始商戦は?
新年第1回目は、
・年末年始商戦の営業状況ポイント
・働き方を見据えた年末年始の休業日の変化
・DEVとテナント間でのコミュニケーションの場である賀詞交換会
についてレポートするとともに、「現在SCに課せられている取り組み課題」を提案したいと思います。
(1)12月と年始(三が日)の営業状況
コロナ禍で、前年は控えていた買物を楽しむお客様が増え、12月商戦も売上の回復がみられ、 そのまま新年の初売りとクリアランスセールへと繋がりました。
正月3日間の大手百貨店の売上は、前年比30%~50%UPとしましたが、
コロナ禍前の前々年(20年)対比では80%の水準に留まっています。
宮城県の河北新報によると、初売り福袋の発祥地と言われる仙台では、 百貨店はじめ各施設とも密を防ぐ「事前予約」や「館内での販売場所分散」での販売を行い、 開店前の行列人数はコロナ禍前には及びませんでしたが、大勢のお客様が列を作り、 初売りらしい雰囲気が戻ったということです。
そして、正月3日間は特に家族連れでの来店が増え、2年ぶりの賑わいを取り戻しましたが、 コロナ第6波の急速な感染拡大が続き、予断を許さない状況となっています。
■弊社(販売代行)も、ブランドやエリア(アウトレットモールは郊外立地)により差がありますが、 12月及び年始3日間の営業動向は同じ傾向となっています。
<2021年12月 前年比及び前々年(2019年)対比> 前年比 前々年比 全社計 125% 104% ミセスアパレル 94% 55% セレクト(プロパー) 126% 90% セレクト(アウトレット)128% 90% シューズ(アウトレット)126% 118% <2022年正月三が日 前年比及び前々年(2020年)対比> 前年比 前々年比 全社計 154% 94% ミセスアパレル 140% 56% セレクト(プロパー) 138% 83% セレクト(アウトレット)156% 89% シューズ(アウトレット)156% 106% |
(2)年末と年始の休業日の変化
■元旦休業のSCは、コロナ禍前から増えつつありましたが、昨年元旦休業に踏切ったのは数施設でした。
そんな中、今年は年末から元旦にかけて連休の施設が出てきました。
・大晦日を休業とし、元旦と連休にした施設 岡山一番街、さんすて福山(山陽SC開発が運営) 天王寺ミオ、ピオレ姫路 ・元旦、2日と連休した施設 首都圏に多くの店舗を運営する丸井 ・年末29日(水)から元旦まで4連休とした施設 モリパークアウトドアヴィレッジ (昭和飛行機都市開発が運営) 施設で、 毎週水曜日を店休日としており、今回は曜日並びから4連休に踏みきりました。 |
■大手食品スーパーは、昨年の元旦・2日の連休に加えて、 今年は元旦から
3日まで3連休とする企業が増え、「ヤオコー」、「いなげや」、
「サミットストア」、「ライフストア」、「オーケーストア」等が実施しています。
・ヤオコーは、「社員が休日を家族とゆっくり過ごし英気を養うことで、 新たな一年、また豊かで楽しい店づくりを目指します」 ・サミット会長は、「もともとスーパーマーケット産業で、働きがいのある会社を目指してきた」とし、 「家族や仲間の関係性をもっと大切にすることが、これから先の生きがいにもつながる」 と述べています。 |
(3)DEVとテナント間のコミュニケーションの場 ―賀詞交換会―
日本のSCでは、対テナント施策の根幹として、テナントコミュニケーションを据えていますが、 その一つとして、DEVがテナントオーナーと直接会う場としての賀詞交換会や総会、事業報告会があります。
ただ、ここ2年間、ほとんどのSCで開催されておらず、 テナント各社のオーナーとのコミュニケーションが取れていませんでした。
そんな中、今年の賀詞交換会の開催を企画したSCがあります。
既に1月4日に実施した「東神開発(株)」と2月7日開催予定の「仙台ターミナルビル(株)」です。
コロナ禍を考慮してテナント企業の参加者は、各社1名とし、会の運用は当然密を避けながら、 立食パーティは無しの開催となっています。
今回、見えてきたこと。学んだこと。
SC運営においては、DEVもテナントも人材確保、育成が重要課題であり、 年末年始の休業および営業時間はそれが凝縮された形でクローズアップされますが、 従業員が働きやすい環境の整備が今、求められています。
■年末年始の休業については、 今年は大手食品スーパーがさらに1日増やし、
三が日を3連休とする決断をコロナ禍が後押ししました。
生活必需品を扱う各社は、休業はお客様にとって不便であり、売上にも影響しますが、 労働環境改善による中長期的な効果の方が大きいと判断されたのではないでしょうか?
一方で、元旦休業のDEVの役員から「自SCのテナント社員が、 元旦営業している他SCの元旦シフトに入って働いている」との嘆きの声を聞きました。
各SCがせめて元旦休業を加速させ、足並みを揃えることを願っています。
■営業時間についても、 緊急事態宣言が解除されて以降、多くのSCが短縮していた営業時間を元に戻しましたが、 解除後も短縮した営業時間を継続しているSCもあります。
そんな中、開業から50年間「21時閉店」を続けてきた「玉川高島屋SC」は、 1時間短縮した20時閉店を継続しています。
2019年(21時閉店)と2020年&2021年(20時短縮閉店)との対比>
前年比(2020年対比) 前々年比(2019年対比) 10月 104% 117% 11月 110% 103% 12月 111% 104% 「1時間短縮でも、コロナ前の前々年(2019年)を上回っています」 |
また、昨年7月にレポートした「新静岡セノバ」は、 業種・業態・各ショップの集客に合わせた接客・働き方を提案する 「トライ!はたらく時間プロジェクト」をスタートして8ケ月が経過しましたが、 「導入した店舗の業績は、導入していない店舗を上回る結果になっている」と発表しています。
これは、「コアタイムでのスタッフの配置を充実させて、 高効率化を図ったことが好結果をもたらしている」のではないでしょうか?
<今年、「市場の風」で皆さんにお伝えしたいこと>
コロナ禍に見舞われたSCは、変化を求められています。
今年は、以下の3つを中心テーマとして、現場で起きている事例等を取り入れながら、 このメルマガ『マーケットレポート(市場の風)』を通して皆様にお伝えしたいと思います。
(1)SCのES向上(環境整備・働き方改革の推進)について
年末年始の休業については、大手食品スーパーが大きく踏み込みました。
営業時間については、前述の「新静岡セノバ」に続いて、 他SCでもテナント独自に決められるようにしたSCが出てきています。
従業員一人ひとりが生き生きと働きやすい環境とは何か?を考えていきます。
(2)SCとしてのSDGsへの取り組みについて
トレッサ横浜は、衣料品を回収し新たな商品に再生してそれをトレッサで使用する循環を実現。スターバックスは、 環境負荷が低い店舗の為の「国際認証」を取得した店舗を皇居外苑にオープンさせています。
SCにとって、お客様(消費者)からだけではなくテナントからも選ばれるSDGsへの取り組みは何か?を考えていきます。
(3)SCに求められる新たな社会的役割について
年末に東急グループ各社のトップの皆様に伺いましたが、「鉄道―百貨店―SC」が一体となって 沿線地域のお客様に対して新たな「生活の拠点づくり」の準備をされていました。
これからのSCは公共機能の充実など「便利で楽しい」と感じて貰える施設への進化とともに、 そこを基点とした「地域価値の創造」への寄与が求められます。 withコロナ、afterコロナにおけるSCの社会的役割について考えていきたいと思います。