DEV大賞とテナント賞の数々の受賞事例に見る運営の秘訣
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今週は、『マーケットレポート』の第14弾をお届けします。
コロナ禍でのマーケットの変化と、商業施設を中心とする現場の変化をタイムリーに捉えながら、 自らも現場を持つ弊社ならではの視点で、これからの時代へのヒントをお届けしたいと思います。
【Market Report vol.13】
ショッピングセンター(SC)の未来を考える ―第4回―
こんにちは!ワンスアラウンド顧問の馬場です。
前回は、SCの運営においては、経営理念(ミッション)を中心に据えての 「オペレーションマネジメントの差別化」が求められている事を述べました。
全国約3200のSCの約3割が単館型SCと言われており、施設規模や売上高では敵いませんが、 お客様の支持を受け、元気で話題になっているSCもあります。評価には、 売上高(年商)や施設規模など色々な基準がありますが、
今回は繊研新聞社主催の「DEV大賞」と「テナント大賞」に焦点を合わせて、 少し掘り下げてみたいと思います。
繊研新聞社主催の「DEV大賞」を検証
前回、SCを支えているのは、「DEV」「テナント」「テナント本部」「業務委託先」の4者と述べましたが、 この賞はDEVとテナントが双方の相手方を選んでおり、第1回(1998年度)から回を重ね、 2020年度で第23回目を迎えました。
DEV大賞の表彰対象は、スタート時は大賞以下7つの賞でした。
その後、準大賞・プロポーズ賞・ES賞が追加され、そして直近では、 パワーアップ賞・情報技術活用賞・セーフティーセンター賞・社会貢献賞等が加わり、 現在は15賞となっており、取り巻く環境変化に対して各SCがどのように対応しているのか?が、 評価の対象になっています。
■「DEV大賞」 過去23回のDEV大賞を受賞したのは、わずかに「8SC」となっています。 第1回(1998年度)から第14回(2011年度)までは関東のSCが占め、 第15回(2012年度)以降は、9回のうち関西のSCが7回受賞しています。 |
日々の運営マネジメントが評価される「CS賞」と「ES賞」
SCにとっては、どの賞も重要で栄誉ある受賞ですが、SC運営に求められる
経営理念(ミッション)の共有と実現についての評価(賞)という意味では、
「CS賞」と「ES賞」が相応しいのではないでしょうか?
そこで今回は、顧客満足の「CS賞」と、従業員満足の「ES賞」に焦点を当てて深堀りしてみました。
「CS賞」は第1回から続く賞ですが、「ES賞」は第9回(2006年度)から設けられました。
両賞は、複数選出ですので、「CS賞」は23回、「ES賞」は15回、合わせて 38回の受賞チャンスがありました。
■「CS賞」「ES賞」 受賞回数上位は以下のようになっています。 第1回(1998年度)からの顔ぶれ、特に直近の4、5年を見てみると、 スタート時のCS賞では、「仙台141」と「ギャレ大阪」が3年連続で受賞しており、 「仙台141」は第1回のES賞も受賞しています。 また、直近では、CS賞は「東京ソラマチ」が、ES賞は「新静岡セノバ」と 「トレッサ横浜」がそれぞれ4年連続で受賞しています。 受賞回数上位は鉄道系SCが多く見られますが、受賞当時はまだ運営会社として合併しておらず、 単館で運営を実施していたSCが多く見受けられます。 |
経験したこと、学んだこと
そんな中で、受賞されたSCの取組み事例のご紹介とともに、経験したこと、 学んだことを述べさせていただきます。
「仙台141」は、1987年に開業し、2008年に閉館したSCです。 出張時、開店と同時に入口を入ると、いつも立礼でお客様を迎えていました。 その後は下層階から順に巡回して、各店舗に声掛けをされていました。 141の閉館時のDEV=テナント間のお別れ会は伝説となっていますが、 日々のルーティンの積み重ねが信頼関係をつくることを身をもって教えていただきました。 ■女性の視点を活かして、活性化し続ける「平塚ラスカ」 「平塚ラスカ」は、国鉄法が変わり、出資第1号として1973年に開業した駅ビルです。 「地域とともに歩む駅ビル」を目標に、新入社員は必須参加、男女同数、部署横断の PJ運用をスタートさせ、そこから女性社員4人が参加するトイレを勉強する 「ワンダフルクラブ(WC)」が生まれ、女性チームが館内のトイレ改革に取り組みました。 お客様のメインは女性客であり、女性目線での施策の実施判断が、SCを 大きく変えた事例だと思います。 ■地域に親しまれ愛されるSCを追求し続ける「トレッサ横浜」 北館に加えて2008年に南館が開業した「トレッサ横浜」は、 親会社であるトヨタの工場跡地の開発でしたので、オープン以来、地域に寄り添い、 コミュニケーションを取りながら、営業施策を実行してきました。 館内イベントは、コロナ前の2018年度には、実に年間600回のイベントを 実施しています。大半は「テナント主導イベント」ですが、季節の行事に合わせた 「地域イベント」も約70回開催しています。 こちらでは、支配人(館長)を「プレジデント」と呼びますが、初代のプレジデントは、 「従業員同士が日本一妙に仲が良い」施設を目指して、店長とのランチミーティング(月1回)や、 年3回の決起大会を実施していました。 このように、「CS賞」「ES賞」を受賞したSCでは、販売促進分野では、 SCの営業にとって最も重要な「集客力アップ」と各テナントへの「販促支援」の施策を実施し、 総務管理分野では、SC内で働く店長・スタッフのバックアップをしていますが、 コロナ禍を体験している今こそ、 このような取り組みがさらに求められているのではないでしょうか。 |
■マネジメントスタイルの原点は、「熱意」と「テナントファースト」
最後に「新静岡セノバ」の改革の事例をご紹介します。
コロナ禍前の2019年秋に「働き方改革」についての取材をさせていただきましたが、 運営体制は、営業から販促、リーシングは、3人の課長中心にプロジェクトを組みながら、 日常のコミュニケーションのなかで日々改善し、PDCAを毎日回していると仰っていました。
施設面では、館内で働くママを応援するために自営の「保育所」を開設。 テナント用の面接やミーティングスペースの拡大。また、テナントの「SNSでスタイリングをアップしたい!」の 要望に応えて、施設内にバックパネルと照明設備を備えたミニスタジオを設置するなど、 テナントをバックアップして信頼関係を築かれています。
年2回のスタッフ懇親パーティ(約500名参加)は閉店後のフードコートで実施されますが、 マネジメントオフィススタッフが企画から準備まで全てを行い、従業員スタッフをもてなします。
また、コロナ禍でのテナント総会や報告会はオンラインや書類送付で実施される施設が多い中、 セノバでは6月にリアルで開催されました。
多くの参加者があり、良いコミュニケーションが図れたとお聞きしています。
さらに、今期の重要施策の一つとして、商業施設の営業時間のあり方を見直し、 店舗スタッフの働き方の無理・無駄をなくす試みとして、テナントのアダストリアとともに、 双方がDEVとテナントという立場で参画するプロジェクトを5月からスタートし、 テナント店舗の働き方にも一石を投じています。
全てに対して、とにかく熱く全力投球で取り組まれている姿勢には、 学ぶことが多い取材でした。
<今回のまとめ>
「CS賞・ES賞」受賞のSCは、経営理念(ミッション)を中心に据えて 差別化したオペレーションマネジメントに取り組んでいる。 |
前回も述べましたが、SCの運営管理を支えているのは、 「ディベロッパー」「テナント」「テナント本部」と「業務委託先」の4者です。
地域のお客様に応えるためには「どんなSCを目指すのか」というSCの「経営理念(ミッション)」を中心に据えて、4者がそれを共有し、それぞれの役割を果たすことが重要です。
その実現には、次のチェックポイントがあります。
■施設の「ミッション」を4者が共有していますか?
■ミッションを「共有する場」は、いくつ持っていますか?
■「継続してみがき続けている」ことは、何ですか?
■何をしたら「ほめていますか?」、何をしたら「叱っていますか?」
■すべてのスタッフ(4者)から「提案があがる」仕組みがありますか?
このことをもう一度、問いかけてみてください。
上記の受賞SCは、ミッションを共有し、共有する場を作り、 継続してみがき続けることを実践されています。
そして、そこには顔が見える「謙虚なリーダー」がおられました。
コロナ禍の今こそ、4者間で、自SCのミッションの確認と差別化した運営管理を目指して、 前に進みましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いいたします。
ワンスアラウンド株式会社
顧問
馬場 英喜